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とりあえず日々思ったことなんかをつらつらと。

 

ミュシャ展

ミュシャ展

現在、東京の国立新美術館で開催されているミュシャ展を観覧してきました。
普段は17世紀のオランダ美術をメインに展覧会へ出かけている僕ですが、ミュシャは近代の画家でも特に好みの画家です。
今回、その代表作であり、本国チェコでもあまりきちんとした公開がされてこなかった至宝であるスラヴ叙事詩が20枚すべて日本にやってくるということで、これは見に行かねば絶対後悔すると思っていた展覧会です。
なにせ、スラヴ叙事詩がチェコ国外に出るのは初めて。これからもきっと海外に出る機会はほとんどなかろうという作品群です。
となれば、普通に見ようと思ったらチェコまで行かねばならず、それはちょっと大変です。そんな貴重な一群の絵画が「全部」セットで日本で公開される。
これはすごいことだと思っていました。
ちょっと仕事とか体調とかの関係で開催期間中に行けるか不安だったのですけれど、何とかフルで1日空いた休みを手に入れ、体調もそれに向け整えて、いざ観覧と意気込んで出かけました。

ミュシャといえば、以前、森アーツセンターギャラリーで開催された展覧会を観覧しています。その時は、ミュシャを世に知らしめる切っ掛けとなったミュシャ様式の作品をたくさん見たのですが、今回はどんな構成になるのだろうと思ってワクワクしていました。全100点の展示物があると事前情報を仕入れて、1割~2割程度は前に見た作品と重なりそうだということも踏まえて、見に行きました。
ミュシャといえばミュシャ様式ですが、ミュシャ様式を有名にしたのはリトグラフによる劇場ポスターです。その辺はリトグラフ故に枚数がある作品ですので、目にすることが容易な作品でもある。事実、今回の展覧会ではミュシャのリトグラフの多くが堺市から提供されて公開されていたものです。堺市所蔵なら見に行けるじゃない?
実際、以前見た展覧会とパッと思いつくだけでも、サラ・ベルナール関係のポスターや四芸術など、軽く10点を超える作品は見た記憶があったと言える作品でした。
良い芸術作品は何度見てもよいのですが。

さて。
今回の展覧会では会場が混むことを予想して出かけました。ゴールデンウィーク初日ですし、事前情報で混んでいるというのは耳にしていたので。
それで会場時間前後に到着するように出かけたのですが、すでに入場待機列ができていました。慣れたスタッフの誘導、タイミングとりのおかげで、割とスムーズに入場できました。
普段はあまり音声ガイドは借りないのですが、今回はスラヴ叙事詩がメインの観覧物。スラヴ民族の歴史やフス戦争といった歴史の知識などが必要となることが必須だと思えたので、より作品群を楽しむために音声ガイドを借りました。入場待機より音声ガイドを借りる列の方が時間かかった感じでしたが、あって正解でした。スラヴ叙事詩20点全部にそれぞれ解説がついており、絵のモチーフについての背景を学びながら観覧できました。お勧めですね。

会場に入り、ちらちら見える作品群からちょっと目を外して、展覧会ではお約束の挨拶文を読み、振り返る。
そこからもう、圧倒されました。巨大な一枚の絵が左手の壁面に飾られていて、奥正面にも同サイズの絵が飾られているのが目に飛び込んできました。スラヴ叙事詩の1枚目である「原故郷のスラヴ民族」と2枚目である「ルヤーナ島でのスヴァントヴィート祭」です。そう、この展覧会、メインの展示物が最初に展示してあるんです。
いきなりスラヴ叙事詩です。
少し、前説的にスラヴ叙事詩に至るまでの作品を見せてからスラヴ叙事詩が来るだろうと思っていた僕は度肝を抜かれた形になりました。
巨大。圧倒的に巨大な絵。ミュシャ独特の淡い色使いではあるものの、深く吸い込まれるような印象的な絵がそこにありました。
僕は以前のミュシャ展を見たときに青を使った絵が少ないと感じました。その青をふんだんに使った絵がそこにありました。「原故郷のスラヴ民族」でした。この絵の圧倒的な迫力と巨大さにまず心を奪われた。そんな展覧会でした。
そこからひとつひとつ、スラヴ叙事詩の絵を見ていきました。以前感じた青が少ないという印象から逆に、青い絵が多い印象を受けました。それはスラヴ民族の苦難の歴史や、戦いや死といったモチーフを表すのに青が使われていたから。
スラヴ民族の苦難の歴史を表現していくのに、悲しみを示す青が外せなかったのだと感じました。以前に感じたミュシャが青という色に持っていたのではないかと思った印象を裏付けるかのように、青の使われ方がすごく特徴的でした。
逆を返せば、青がない作品はスラヴ民族の平和的な時代を描いていたり、勝利のシーンだったりするわけです。こう考えたのは僕個人の主観なので、専門家の方から言わせれば違うかもしれませんが、僕は直感的にミュシャという画家が青という色に持っていた印象を、そうとらえました。
番号の塊で一か所に展示されていますが、順番は変えられて掛けられている部分もありました。関連する絵は並べて掛けられていますが、絵がとにかく大きいのでスペースの関係上で、入れ替えられていた印象。一応、見る人が特に意識しないで会場を歩いていれば、1枚目の「原故郷のスラヴ民族」を最初に見て、20枚目の「スラヴ民族の賛歌」を最後に見るようには並べてありました。僕は順番通りに行ったり来たりしながら観覧。一応、ナンバリングされているということはそれに意味があるのだと思ったので。
ですが、ナンバリングと製作順も一致しないし、たぶん、ナンバー順に見れば歴史をたどっていくことになるのだと思うのですけれど…。どうだったんだろう。少なくとも登場人物が前後することはなかったです。

スラヴ叙事詩を見終えた後は見慣れたアール・ヌーヴォー調の絵を観覧。ここは前に見た展覧会とのダブりも多かったですが、きちんと鑑賞。やはりミュシャといえばこれだよねと思いながらも、スラヴ叙事詩の衝撃が頭に残っていて、リトグラフの絵は少しちゃちに見えてしまいました。いや、素晴らしい絵なんですよ。どれも。
そして、会場内で一番空いていたのが、世紀末の祝祭と題されたコーナー。1900年のパリ万博の関係の絵と、プラハ市民会館の壁画の下絵が展示されたコーナーです。ここの絵はミュシャ様式でもなく、壁画の下絵ということで軽視されちゃったのかもしれないですけれど、よく見ると、どれもスラヴ叙事詩に繋がっていく重要な絵なんですよね。人物画が多いのですけれど題材になった人物はどれも、スラヴ叙事詩に描かれた人物。スラヴ叙事詩の簡易版ともいえる絵がそこにありました。これを軽視していっちゃうのすごいもったいないなと思いながらも空いてるのをいいことにゆっくり鑑賞しました。
そこからはヒヤシンス姫などまたアール・ヌーヴォー調のミュシャ様式が多用された絵が多く、また人が溜まりやすい傾向にあったように思えます。
ミュシャがポスター画家から、スラヴ叙事詩のような一大作品を手掛けていくようになる過程の作品が展示されていました。
やっぱり本の挿絵とか、切手や紙幣のデザインなんかもやってたらしく、そういうのも展示されてるのがミュシャらしいなぁと思いました。

今回の展覧会で印象に残ったのはやっぱりスラヴ叙事詩です。
もうその迫力といったらない。
他の絵はかすんでしまう。人の情熱ってすごいと思いました。スラヴ叙事詩は発表当時は時代遅れだと言われたそうですが(当時は抽象画などが主流になりつつある時代で、写実的傾向のある画風のスラヴ叙事詩は寓意が込められていても時代遅れの烙印を押されてしまったようです)、当時の人、見る目無い!と思いましたね。20点の作品の中で特に印象に残ったのは1枚目の「原故郷のスラヴ民族」と20枚目の「スラヴ民族の賛歌」、そして、唯一未完の作品である18枚目の「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い」でした。恐怖、不安を描いた「原故郷のスラヴ民族」、未完で終わりスラヴ民族解放のための誓いのシーンを描き、神に見守られた図を描いた「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い」、そして、苦難と困難を乗り越えた末に勝ち取られた解放を描き、自由と平和のシンボルである「スラヴ民族の賛歌」が特に印象的でした。
その他、スラヴ叙事詩を見ていて全体的に思ったこと。
絵の中からこちらを見ている人物がほぼ必ずいること。全部が全部に描かれているわけではないのですけれど、大半の絵に絵の中から何かを訴えかけるかのようにこちらを見ている人物が描かれていました。「原故郷のスラヴ民族」の主人公であるスラヴ民族の男女なんかは典型的なその例ですね。
何かミュシャに問いかけられているような気がしました。
そして、スラヴ叙事詩全体からは何か祈りというものを感じました。スラヴ民族が歩んできた苦難の道。その中で生まれたであろう人々の祈り。そういうものが込められた絵だと感じました。

素晴らしい作品群。
見れて本当に良かったです。感動の一言につきる。
全100点の展示で、僕が観覧にかかった時間は3時間弱でした。まぁ何回もスラヴ叙事詩を見に戻ったからね。
あ、スラヴ叙事詩のうち5作は写真撮影が可です。皆さん写真をとってました。
ただ、人が多いので人が写りこまないように撮影するのは困難かな?
あと、絵が大きいからどうしてもまっすぐ全体像を撮るのは難しいです。


「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い」
右サイドが切れちゃってますが、人とぶつからずにとるのはこれが限界。ななめに撮影されているのはどうしても下から見上げる形になるからです。他の4枚を撮影したのには人が写りこんでいます。どうしても人が多くて避けれなかった。
でも記念。
「スラヴ民族の賛歌」をバックに自撮りもしてきたよ。(笑)
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日記は思考が結構、鬱っぽいので鬱日記になること多し。
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