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とりあえず日々思ったことなんかをつらつらと。

 

<harmony />

Project Itohのアニメ化作品として2番目に劇場公開された<harmony />です。
本来は虐殺器官の後に公開される予定だったのですが、虐殺器官の制作遅れ、中断によって前倒しで公開された作品です。
劇場には見に行けなかったのでBDを購入して視聴しました。
Project Itohでのアニメ化が決定されている伊藤計劃の作品の中で、一番好きなのが<harmony />でした。なのでこれはすごく期待していたアニメ作品です。
ただ、残念なのは<harmony />は虐殺器官を前提としている面のある物語なのですが、虐殺器官より先の公開になってしまったので、前提の説明部分がいくつか宙に浮いた状態になってしまったことです。登場人物のセリフでもその辺の部分が若干あるので残念に感じました。
なお、制作会社の倒産という理由で制作が中断された虐殺器官は、新会社で制作が継続されることになったものの、この<harmony />のBDが発売された今なお公開のめどはたっていない模様です。残念。

さて、<harmony />のアニメ化ですが、ほぼ原作に忠実に作られていて、オリジナルの要素を持ち込んだ、屍者の帝国とは対照的な作品だと思いました。
もともと原作が主人公であるトァンの視点でずっと描かれていく作品でしたが、この映画もその視点を崩さずに制作されています。
ただ、シーン毎でキャラクターがしゃべる内容は大幅にカットされているのが残念と言えば残念な要素。
これは原作を2時間という映画の尺に収めるためにぎりぎりまでそぎ落とした結果だと思います。
原作の持っていたテーマ性を損なわずに描ける限界までキャラクターの会話などはそぎ落とされています。特に最後のシーンでのトァンとミァハの会話がずいぶん簡略化されてしまっているのはすごく残念ですね。ただこのシーンは馬鹿正直に映像化したら数十分はかかるようなシーンですので仕方ないでしょう。
他が描けなくなってしまいますしね。

その状態でも劇場用アニメとして、テーマは伝わりますし、なかなか良作に仕上がっていると思います。
生きるということをテーマにしていて、ミァハの死にとらわれながらも生きていくことを選んでいたトァン。生命倫理にとらわれた世界を否定しながらも、生きるということには固執していたように思えます。
その結果が、あの仕事の合間の不良行為だし、スリルの中に自らを置くことで感じられる生をトァンは求めていた。それはミァハがいざなった死を受け入れられなかった贖罪行為だったのかもしれないけれど、結果的にトァンの行動は生を意識するものでした。
そのトァンは実は死んでいなかったミァハの用意した状況に身をゆだねて「サヨナラ」という言葉を発する。生の終わりを彼女は感じたわけでしょう。実際には死んだわけではないけれど、死と同じ場所への到達を彼女はそう表したというところで終わる。
ミァハにはその場を与えることをしなかったことは、トァンの心情の複雑なところですが、復讐心にも、救いにも取れるところが難しいところです。
アニメだとその辺がセリフがないためにぼやけて見えますね。原作小説では「復讐心」であるとトァン自身が語っているので明確なのですが、アニメではその辺の受け取り具合は視聴者に任された感じになっています。
なにせ、トァンとミァハの関係性の物語としてアニメが構成されているので、あえてそうどのようにもとれるようにしたのだと思います。

逆にアニメだと明確になったのは、アバンとエピローグの語り部というか、視点の所在。原作ではトァン自身が書いた瞬間のログが見せられているのか、誰かがトァンの生命ログを見ているのか、視点があいまいになっていましたが、アニメではだれか第三者が見ているという描写がされていました。
<harmony />の原作の特徴であった、htmlのようなタグの描写をこう表現してきたかと感心してしまいました。
と同時に、これ第三者が見れるようになってるの?!という驚きも。
もちろん、何かしらの権限があってトァンのログは参照されたのでしょうけれど、見ていた人物が結構若いように描写されていたので、誰でも見れそうな感じでした。
果たしてトァンのログを参照していた彼女は自我を持っているのか、自発的にトァンのログを参照していたのか、それはすごく気になるところですね。
すなわち、自我を失った世界、意識のない自動的な世界になってしまったかの答えが、最後に描かれていた彼女の存在だと思うんですよね。
アニメと原作でテーマ的なもの、物語的なことにたどり着く鍵が、違う形で提供されている。面白いと思いました。

アニメとしてはキャラ絵がちょっと好みではなかったのですが、背景画はものすごい出来。未来的な東京の風景、雑然とした現在の延長線上にあるバグダッドの風景、チェチェンの自然。それらすべてが素晴らしく美しいものとして描かれている。特に自然と人工物の対比が素晴らしかった。
キャラ絵の好みは人それぞれですので、僕の好みは作品の完成度には関係ないものですのでおいておいて、絵、そして音楽の完成度がすごく高いものでした。
さすが劇場用のアニメだなぁと感心。
同じ値段で買ってもテレビアニメのBDとは価値が違うような感覚を得ました。お得感。

アニメだけでも完成度は高い作品です。
だけれども、アニメしか見てない人はぜひ原作も読んで、もっと深く<harmony />という作品を考えてほしいなとこのアニメをみて思いました。

<harmony />
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日記は思考が結構、鬱っぽいので鬱日記になること多し。
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