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とりあえず日々思ったことなんかをつらつらと。

 

小説 BLAME! 大地の記憶

小説 BLAME! 大地の記憶

冲方丁:著
弐瓶勉:原作・イラスト
講談社


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アニメ映画も公開されにわかに活気づいているBLAME!の小説版です。
原作はシドニアの騎士で人気を得た二瓶さんの作品、つまりコミックです。
結構古い作品になるので、なんで今頃?という気がしないでもないですが、映画化に合わせて小説などを出版したという感じでしょうか。
原作も新装版が出てますしね。
さて、BLAME!ですが僕は原作を連載していた雑誌を読んでいた関係でちょこっと読んだことがあります。単行本も買いました。1巻だけ。原作は10巻まであるのですが、1巻で挫折したという苦い経験がある作品です。1巻の内容以降は雑誌でも読まなくなってしまったので、ほぼ初見といっていいでしょう。
原作でなんで挫折したかというと、主人公の霧亥が強力な武器を片手に何かを探しながら巨大構造物の中を移動していくという話で始まっているのですが、情報量がものすごく少なくて、何がなんだかよくわからなかったから。科学者のシボが出てくると少し情報量が増す感じはありましたが、基本、霧亥はしゃべりませんし、敵と会話すら成り立たないことが多いように思えました。
そういった中で、目的がなんなのかも良くわからないまま、独特の世界観と絵柄で押してくる作品は当時の僕には早すぎた感じがします。
挫折した作品であるのですが、小説ならば少しは情報量が多くなってるだろうということと、冲方さんの作品であるということで、手に取ってみました。
読後に少し情報を検索しましたが、ほぼ初見と同じ感覚で読み始めました。どうもこの作品は原作の2巻までをノベライズ化した作品ということのようです。

無尽蔵に高い構造物が建てられて、その中で人類(またはその系統分岐種)が暮らしているという世界観。構造物を建造しているのは基本機械でオートメーションされていて、またセーフガードという存在が、中で暮らしている人々を見つけ次第排除しにくるという危険な世界となっています。端々に出てくる時間の情報から、この構造物が「地球」に建てられている構造物であることと、とんでもない高さと広さを誇っていることがわかります。そして、人類が進化していろいろな種へと分岐して存在していることからとんでもなく未来の話であることが分かります。
その中でネットスフィア(構造物を維持管理しているネット空間)に接続できるネット端末遺伝子を持った存在を見つけることを使命とした霧亥が旅を続けていくという話になっています。その過程で出会った特殊な遺伝子を持った存在のサンプル収集などをしながら、旅をしていきます。基本的に霧亥の行動指針は人類を守る存在であり、依頼さればそれを遂行します。ただ、その依頼がなければかかわらないなど、自分を律するルールがややロボット的に感じました。本作で最初につれている少年と接するときや、シボと出会ってからは人間的なところも見せるのですけれど。
シボに請われることで生電社の頭取と戦うことになり、塊都という空間を救うために戦い、勝利を勝ち取るところで本作は終わっています。
そこまでで霧亥が空を見ることと大地についての記憶の断片を思い出すことをして、霧亥という存在がどんな存在なのかをおぼろげながらに説明して本作は終了となります。
ある一つの結末ではあるのですけれど、これ途中だよね!という感じになりました。

遠い未来において、都市から人々が切り離されて生きている時代に、霧亥という人がどういう風に感じてどういう風に生きていくのかを描いていた。それは冲方さんの感覚で現在の人たちにも投影できる感覚らしいですけれど、僕の実感としてはあまりそういうのは共感できず、読後感としてどう受け止めていいかすごく迷う作品になってました。
人によって受け取り方は違うと冲方さん自身も言ってるのでそれでいいのだとは思いますけれど。面白かったかといえば、原作のコミックよりはわかりやすかったし、作品世界を理解できたというのはあるんですけれど。満足感はちょっとない。
この先に霧亥がどうなっていくのかとか、結局、ネット端末遺伝子は手に入っていないので旅は続くんだということとか、人類が滅びに向かっていることが示唆されているとか…。この先が読みたくなることがいっぱい残っていて…。原作を読めってことなんでしょうけれど…。小説の終わり方としては不満足感がありましたね。先を読ませろと言いたい感じです。
でも、雰囲気からして小説版はこれで終わりなんですよ。
大地という大切な場所の記憶を断片的にでも霧亥が思い出したという点で、人類にとって帰るべき場所というのがどこであるのか示唆されている気がしました。この構造物に寄り掛かって生きている間は、人間は滅びの道から逃れられない。そんな気にさせられる物語、語りでした。

冲方さんのネームバリューを壮大に使った原作の宣伝小説。
そんなポジションなんですかね?これ。
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86―エイティシックス―Ep.2 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―

86―エイティシックス―Ep.2 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―<上>

安里アサト:著
しらび:イラスト
I-Ⅳ:メカニックデザイン
電撃文庫


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スマッシュヒットを飛ばした第23回電撃小説大賞受賞作から5ヶ月。
2巻目が刊行されました。
人気あったみたいだからなぁ。本屋では山積みになっていましたし、それが順調に減っていってたみたいだし、なかなか運のよい作者さんだなぁと感じました。
もちろん、1巻の話はとても面白かったので、迷わず2巻目のこの巻も購入しました。
ただ、1巻でこの物語って一応の完結をみているのですよね。
レールガンを搭載した〈レギオン〉によって突破口を開かれてしまった共和国は滅び、レーナ達は連邦に助けられてシンたちと再会する。そういう終わりでした。
この物語ってこれが一番きれいな終わり方であってさ、〈レギオン〉との最後の戦いまで描くかどうかというのはまた別の問題であったわけです。
この第2巻を読み始めるときに、どの時点の話を描くのだろうと思って読み始めました。可能性のあるのは、シンたちが特別偵察へ出た後、連邦へたどり着くまでの話になるのか、連邦にたどり着いた後、レーナと再会するまでの話になるのか、はたまた新たな戦場へ赴く話になるのか。3つの物語が考えられましたが、本作は連邦にたどり着く直前から、〈レギオン〉の大侵攻が始まるところまでとなっていました。
1巻で存在だけ示唆されたレールガン搭載の〈レギオン〉が出てくるところまでとなっています。

きつい戦いを戦い抜いて、シンたちスピアヘッド戦隊の5人は1人も欠けることなく隣国となる連邦へたどり着き、あわやというタイミングで救われます。
そこで、良心的な後見人を得て戦いから離れた生活を経験するところから始まるのですが、物語の都合上彼らは軍属であるはずなので、軍隊に復帰することは分かってました。
悲しいけれど、彼らの居場所って平和な都市、守られた場所ではなく、守るために戦う場所がそれなんですよね。
そうやって生きてきて、そうやって生きることを決められてきた。それ以外の生き方は知らないし、戦わなければ人類に未来が無いことを知ってしまっている。だったら戦うという選択肢しか持たないというのを確認する物語になっています。
レーナのシーンが無いわけではないのですが、紙面のほとんどはシンの心情を描くのに費やされていました。1巻では戦闘シーンこそシン達に視点が当たっていましたが心情が描かれていたのはレーナの方でしたのでちょうど逆の状態になった感じです。

帝国の遺児であるフレデリカとの交流を描きながらも、シン達86の悲しい運命を描いているといった感じでした。このフレデリカが下巻ではキーキャラクターになりそうです。レールガンの〈レギオン〉にはこのフレデリカの関係者の脳が使われてそうな感じですし、あきらかに狙われてる感じでしたので。
巻の最後でレーナ側の戦いも描かれて1巻で語られた共和国の最後の1週間が始まったことが分かりました。
3巻はこの話の下巻になるのですが、どういう展開になるんですかね。
今から楽しみです。

そういえば、物語の中で1つあいまいになってることがあり、すごく気になりました。
それは作中での時間経過。
シン達は〈レギオン〉の支配域をどれくらいの時間で通り抜けたのか、また、作中で士官学校へ行ったことが書かれているのですが、どれくらいの時間経過があったのかが明確には書かれてないんです。
書かれてなくても、シン達に変化があれば気にもしないのでしょうけれど、変化が無いんですよね…。1巻の時のメンタリティとあまり変わった感じがしないんです。
士官学校へ行ったのであれば、少なくともそこで1年2年は経過してるでしょうから、それだけシン達は歳をとるわけです。シンが何歳なのか明確には書かれてないのですがどうもミドルティーンのよう。この時期の年という単位の時間経過は結構大きいと思うんですよね。また、フレデリカにも変化があったようには描かれてないんです。
フレデリカは10歳前後と描写がありましたから、シン達が士官学校へ行ってる間にローティーンから下手したらミドルティーンへ差し掛かる年齢なんですけれど、描写が10歳のままだったんですよね…。
ちょっとその辺が気になりました。
もしかして連邦の士官学校って戦時ということもあってすごく、就学期間が短いんですかね?
その辺はまだ若手の書き手さん故のところですかね。

3巻は今年の冬だそうです。11月くらいに出ればいいなぁ。早ければ早いほどうれしいけど。

 

忍物語

忍物語

西尾維新:著
VOFAN:イラスト
講談社BOX


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通巻で23作目だそうで。
いつまで続くんだ物語シリーズ。この巻の最後で最低あと5冊出ることが予告されています。まだまだ続くよ物語シリーズ。全巻アニメ化するとかいう計画あったけれど、あれ、サードシーズンまでだよね?その後のシリーズまではやらんよな?BD買うお金が持たないですよ?と不安になるこの巻はモンスター・シーズンの第一話となっています。いったい何度目の第一話だろうとか思いました。
しのぶマスタードとサブタイトルが付いています。マスタード?とちょっと首をかしげましたが、扉絵にデストピアの名前があったので、主人=マスター→マスタードともじったようだと推測しました。
しかし扉絵に描かれたのは二人の幼女。一人は忍だとすぐわかるのですが、もう一人がデストピア?
業物語でキスショットを生み出した吸血鬼がデストピアでしたけれど、幼女ではなかったはず。と首をかしげながら読み始めました。
そもそも、デストピアって男だったよなとか思ったんですけれど、読後に業物語を確認したら女性って書いてあった。デストピアが男性口調なので勘違いしていたようです。

久しぶりにミステリ仕立ての作品となっています。
直江津高校女子バスケットボール部の部員が次々と木乃伊状態で見つかって、吸血鬼の関与が疑われる。
その解決に臥煙さんと、臥煙さんに呼び出された阿良々木君が乗り出していくという物語です。その捜査の過程で浮かび上がる犯人がデストピア。
デストピアが何故、直江津高校の女子バスケ部の部員を狙うのかとか、どれだけ被害がでるのかとか戦々恐々とさせながら話が展開していきますが、どんでん返しがあってデストピアが木乃伊化して見つかるなど、相変わらず面白い展開がてんこ盛り。
登場人物は普段の物語シリーズより多い感じでした。結構な人数でてたかな。それにゲスト的に出てくるキャラクターもそれなりに多くてちょっと物語シリーズとしては異色な感じになってました。

今回は余分なキャラクターのおしゃべりが少なかった分、メタ発言やメタ描写が多かった。西尾さんの別作品に言及することも多くて、別シリーズ読んでないからわからないよというところもちらほら。まぁ、その辺の描写は分からなくても本筋には関係しないので良いのですけれど…。できれば知りたいなぁと思うんですけれど、西尾さんは筆が早いので全部抑えると西尾作品ばかり読んでることになりそうですし、仕方なしというところでしょうか。
僕が気が付いただけでも、伝説シリーズ、忘却探偵シリーズ、りすかシリーズ、美少年シリーズに言及がありました。この中で僕が読んでるのは伝説シリーズだけで他のところはさらーっと流しました。なるべくこの手のメタ発言はやめてほしいですね。

謎解き、展開、オチ。
きちっとまとまっていて、なかなか面白かったです。
コンスタントに面白いシリーズですが、多少のあたりはずれはあるもの。
この巻は当たりだったなぁと思いました。
デストピアは腐っても吸血鬼で、幼女化していてもそれは変わらないというのが、キモだったと思いました。
忍とは違うんだなぁとつくづく思い知った感じがありました。本来の吸血鬼はデストピアの方なのですが…。
さて、この巻から始まるシリーズではまだデストピアの出番もあるみたいですし、モンスターシーズンと銘打たれてますから怪異がまたぞろぞろ出てくるのかなと思います。
どんな展開になるのか楽しみですね。

 

テスタメント・シュピーゲル3 下

テスタメント・シュピーゲル3 下

冲方丁:著
島田フミカネ:イラスト
角川スニーカー文庫


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とうとうたどりつきました最終巻です。
テスタメント・シュピーゲル3巻下巻。通巻では5巻目になります。
前シリーズのスプライト・シュピーゲル、オイレン・シュピーゲルから数えれば13巻目という形になります。
テスタメント・シュピーゲルは一冊一冊が厚いので、スプライト、オイレンの前シリーズから見ると倍くらいの分量はあった感じですね。
長かった物語もこれで最後、終局を迎えることになります。

もうなんかね、これだけ分厚い本小説なのですが、3/4はひたすら戦っている印象です。基本は上巻と同じく列車を守りながら待ち伏せる敵と対峙していくという展開ですが、その時その時でそれぞれの因縁が絡み合ってきていて、各人の見せ場があってひたすら燃える展開が続く。
まずは、鳳の救出に成功したのちは、情報汚染に対抗するための拠点確保のために児童福祉局の羴までたどり着く戦い。そして、情報汚染に対抗する手段を確保したのちは、都市機能を復活させ、テロを主導した者たちを追うために行政局を確保する戦いと、目まぐるしく戦場が文字通り移動してく。だって列車で移動しているから。
読んでいて安心できるのは涼月の戦いでしたが、その涼月ですら特甲レベル3やらレベル4やらから受けるフロー状態と戦いながら、それでも前へ進み続けるという信念とガラテア・コンプレックスによって救われて何とかという感じだったのがハラハラさせられます。他のメンバーはそれぞれに何等かの不安を抱えているので、涼月よりは不安感がぬぐえないんですよね。結局は皆、克服していくのですけれど。

そして、狂ってしまった特甲猟兵たちを退け、キャラバンのホイテロートとロートヴィルトを退け、裏で事態を操っていた3台のトレーラーにたどり着いて、それぞれの場所でそれぞれの人物を逮捕または倒していく。
理想は全員逮捕なんでしょうけれど、ぎりぎりの戦いの中でのことなので、結果的に救えない人物ってのもいて何人かは倒すという終末でした。
一通りの戦闘に方が付いたときに、おぼろげになぜこのような事態が発生したのか、数々のテロ事件のトリガーは何であったのかがわかってきます。
そして静かなパートへ。
戦闘ではなく事件に関わった重要参考人や犯人を逮捕していくというフェーズがこの作品にはあり、あぁさすが冲方さんだなぁと思いました。
ラノベだとさ、最後の戦闘のドタバタの中でさ、何から何まで片がつけられて、最終的な大物の犯人もこのドタバタの中で処理されることが多いんですよね。この作品はそうじゃない。ドタバタしてるところには決して出てこない、裏から手を引いている人物ってのがいて、そこへたどり着いてすべての決着がつくという状態になっている。
その方が話としてはリアルだし、盛り上がりには多少欠けるところがあるかもしれないけれど、納得がいく終わり方だと感じました。

結局、雛が事件が終了して水無月が迎えに行くまで、姿を隠したままというのは面白かった。自分だけなんか城を作り上げてるし、まさに蜂か!とか思いました。
でも、その雛もその自分の城から出てくることを選んで自分の道を進み始めるのは感動的でした。ただ、どこで雛が例の犯罪者になってしまうという恐怖感を克服したのかが描かれてなかった。たぶん、皇や螢と行動するうちに、また迎えに来てくれた水無月と話し、ガラテア・コンプレックス的に皆とつながったことで克服したんだろうけれど、描写がなかったのが残念だったなぁと思いました。

それぞれの道をそれぞれが、選び、歩みだすというラストシーンは感動もの。
最後まで記憶が完全に戻っていなかった鳳の記憶も戻り、冬真との絆を確認しあえたラストはグッとくるものがありました。

長かった物語。冲方さんの最後のラノベ作品。
すごく堪能できた。
でも、ラノベももっと書いてほしいなと思わなくもないですね。
まぁ、シュピーゲルシリーズはラノベブランドから出てただけで、早川とかから出ててもおかしくない内容でしたけれど。
数秘術とか難解すぎて何を言ってるか理解できないよ。(笑)

刊行に時間がかかってしまって物語の設定年を現実が追い越してしまったのはSFとしては残念だった。
ただ、そのことによって用語とかは変えられることはなく初志貫徹で書かれてましたね。
たとえば作品が始まった当時はスマホとかなくて個人用の携帯多機能デバイスはPDAと呼ばれていたのですが、作品中で皆が持っている通話デバイスはPDAです。スマホじゃないんですよね。この辺のこだわりというか整合性を最後まで保ってくれたのはうれしかったです。漫画やラノベだと平気で現実の表現に合わせてきてしまうことがあるので。
こだわりを持って書かれているなと感じた一面でもありました。

 

テスタメント・シュピーゲル3 上

テスタメント・シュピーゲル3 上

冲方丁:著
島田フミカネ:イラスト
角川スニーカー文庫


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3巻上巻です。
いや、なんかこの表現おかしくないですかね?
まぁ、本来3巻となる話が上下巻になりましたということなんですけれど、シリーズものなのですから4巻(2巻も上下巻だったので)でもいいじゃない?と思うのですが、その辺はやっぱり区切りとしてのナンバリングは必要だったのかもしれないと飲み込むしかないんですかね?
さすが、ファジーに本の厚さを変化させる作家さんです。(カオスレギオンのころ、冲方さん自身がそう言っていた)
最初のスプライト・シュピーゲル、オイレン・シュピーゲルが発表されてからずいぶん時間がかかってしまいましたが、無事最終巻にたどり着きました。
実際には下巻がこの後あるので、まだこの巻で完結するわけではありませんが、このテスタメント・シュピーゲルの3巻をもって、この物語は完結する流れとなっています。

さて、視点。
スプライト・シュピーゲルはMMSの。オイレン・シュピーゲルはMPBの視点を持っていました。
テスタメント・シュピーゲルに入って統合されていくのかなと思ったけれど、結果的に1巻はMPBの視点で、2巻はMMSの視点で描かれていました。
そして2巻のラストでMMSの視点の話の最後でMPBの涼月が走り始めて終幕を迎えるという流れになっていました。それを引き継いだこの巻は完全に視点はMMS、MPBを統合した形で1本のストーリーを多角的に見ていくという流れになっています。
基本的な視点はMPB遊撃小隊の3人、MMSの要撃小隊の2人(乙、雛)が持っていますが、その他にも彼女らを支える大人たちや、敵の視点をぽんぽんと移動しながら事件を追っていくという形になります。

ウィーンで起きたテロ事件を扱ってた本作ですが、敵も味方も総力を結集していくという形になっています。もともと複雑に絡み合っている人間関係が一気に噴出してくるので把握するのがすごく大変。
できれば、スプライト・シュピーゲル、オイレン・シュピーゲルから読み直してから読むの推奨。だけど、まぁ、僕はそのまま読みましたけれどね。大筋は押さえてあったし大丈夫だろうと思って。
今までバラバラに動いていた敵方が今回の事件では結果的に連携して動いているというのが2巻までで描かれていましたから、まとまって連携した上で事を起こしてくる敵にたいして、バラバラだった味方が涼月の元へ集結してくるという話になっています。
起きている事件に対して疾走し駆け抜けていく涼月を象徴するように、味方側は情報攪乱や電源喪失が起こっている街中を蒸気機関車で移動し対応していくということになります。
基本的に現状では主人公側は対処療法というか、起きている事件に対して対処していくという形。一応、マスターサーバーである羴のある場所を目指して仲間を回収しつつ移動するという図式はあるものの、まだ行く手を阻まれており後手に回っている感は否めなかったですね。
特甲レベル3や4の謎が残っている状態で、それの解決が目的になりつつありますが、明確には敵の目的とか誰を捕まえたら事件が終息するのかとかはなんとなくぼんやりした状態。個々の組織や個人の目的はほぼ明確になってるんですけれどね。
その辺がフラストレーションではあったかな。

疾走感がたまらない。涼月が熱い。
そして、鳳の状態が心配すぎる。仲間の中で1人だけ人格改変プログラムの影響であるフロー状態から抜け出せていなくて、動きが敵側に回ってしまっているのがすごく気になります。
あと、今回あんまり出番がなかったけれど、接続官たちの状態も気になりますね。水無月は雛とか乙のフォローしてましたけど、身体はどこだ?みたいなこと言ってましたし。

最終の3巻下巻はこの7月に発売されたので、続きは連続して読みたいと思います。
どうか、皆が救われるハッピーエンドで終わりますように。

 

PSYCHO-PASS GENESIS 4

PSYCHO-PASS GENESIS 4

PSYCHO-PASS GENESIS 4
吉上亮:著
サイコパス製作委員会:原作
ハヤカワ文庫JA


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4巻目。
吉上氏による一連のPSYCHO-PASSの小説では通巻で6冊目になります。これが氏の執筆するPSYCHO-PASSシリーズの最終巻となります。

前巻で離れ離れになってしまった滄と茉莉。
前半は滄が茉莉を取り戻すために行動していく話になっています。「帰望の会」を追いながら、茉莉を奪還するべく動いていきます。対して、茉莉の方は秋継に利用される形で、後天的免罪体質者の謎に近づいていく。秋継に利用される身の上から、OW製薬での「帰望の会」の構成メンバーへの尋問役、「帰望の会」の本当の目的を知るために再びエイブラハムの元へと立場を転々としながら、免罪体質者とはどんな存在なのかというのに近づいていってました。
地道な捜査を続ける滄よりも、茉莉の方が本質に近いところにいるというのが、なんとも皮肉な感じです。
滄の場面は基本的に手に汗握る展開が多く、茉莉の場面ではハラハラさせられてという感じが多かったですね。

そして、最終局面では「帰望の会」がノナタワーの落成式でのテロを計画していることが分かり、それに向けて罠の張り合いになります。
滄が採った手段というのが、TVのPSYCHO-PASS本編の厚生省では絶対取らない方法で、まだサイマティックスキャンによる犯罪係数による執行が行われてないからできる手段。
「帰望の会」が活動するときに後天的免罪体質者を連れているために、そこだけ色相が綺麗な状態が発生するというのを逆手にとって、色相汚染を人為的に引き起こして、敵の場所を把握するという手段でした。
それに協力するのが、泉宮寺豊久というのはなんとも皮肉な話。
後にシビュラによって裁かれる彼がシビュラを守るために協力するというのは印象的でした。
また、ネタばれになりますが、シビュラがノナタワー内に無いというのも読んでいてびっくり。TV版ではノナタワーの地下区画に設置されていたので読者へのひっかけにもなっていた感じですね。
そして、お互いを守るために死力を尽くしていく滄と茉莉という構図になっています。
最後の一瞬、二人は邂逅しますが、結局それが、最後の別れになってしまうのが悲しかったです。

結果的に、滄と茉莉、二人がどうなったかというのが意外な結末でした。
滄の方は先天的免罪体質者であるということから、なんとなく想像していたのですが、茉莉の方は意外でした。そのためにこうゆう仕掛けを持ってくるかとひとしきり感心してしまった。全体的にこのGENESISの物語はTV版の1期、2期、そして劇場版、すべてをかなり意識して構築されていたなと感じました。
二人の犠牲の上に生み出されたシビュラのユニットが、シビュラというシステム全体の中でどういう位置づけなのかというのが最後の最後に語られます。
それは、希望だったのではないかと僕は思いました。
TV版や劇場版などを通じて、シビュラってのはどちらかというと、悪い面が強調されていました。一部の特殊な人によって人類が管理される社会。それがシビュラシステムで構築された世界の本質です。
しかもシビュラのユニットは免罪体質者で構成されているので、色相が計れない。良きも悪きも計測できないうえに、元犯罪者の脳が利用されていることが多いというのが、ネックだったわけです。社会を維持するために人を犠牲にすることいとわないシビュラの姿がこれまでは朱の言う問題点であったわけですが、朱と考えを同一にし、彼女の行動を是とするシビュラのユニットがあることは希望なのではないかと思えました。
2期のラストで、総体としてのシビュラは正しいかというのが問われましたが、理想郷としてのシビュラは未完成なものであり、ただ、そのシステムがもたらす恩恵が人類のために悪いものではないという面もあるというのが、PSYCHO-PASSの管理社会のありようでした。ですが、滄と茉莉、二人の犠牲で生み出されたユニットが、シビュラを正しい道へ導いていってくれるのでは、決して最悪の最後の一線を越えさせることはないのではないかと思わせてくれて、希望が少し持てるラストでした。
滄と茉莉、二人の意思は朱に引き継がれていっているというのが、この悲しい物語の救いであり希望であったように思えました。

TV版では嫌な印象しかなかった禾生壌宗。
この作品では本当の禾生壌宗がどのような人物だったのかが描かれた感じです。
いつか、本当の禾生壌宗と常守朱が会話する場面を見てみたいですね。
でも、物語には引き際というのがあるから、たぶんそれを見ることはないでしょうね。それがあるとしたら、シビュラの電源が落とされる日でしょうから。

 

PSYCHO-PASS GENESIS 3

PSYCHO-PASS GENESIS 3

吉上亮:著
サイコパス製作委員会:原作
ハヤカワ文庫JA


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3巻目。
予定では5巻までだったようですが、ストーリーの構成を考え直した結果全4巻となるとあとがきにありました。
「シビュラ」と「サイマティックスキャン」をテーマとして描いていくそうです。
1巻2巻では「犯罪係数」をテーマに書いてたらしいです。
確かに征陸さんというキャラクターを通して、「犯罪係数」がどうすれば上がっていくのか、どうなってしまうと犯罪係数が上がるのか、上がった結果どうなるのかというのが、1巻、2巻では描かれていましたし、それと同時に免罪体質者についても描かれていました。で、この3巻ですが、主に「シビュラ」と「サイマティックスキャン」では「サイマティックスキャン」を描いていたのかな?展開的にちょっと影が薄いサイマティックスキャンです。
1巻、2巻が2080年代から2090年代を描いていましたが、この巻ではさらにさかのぼって2070年代を描いています。
なので、TVのPSYCHO-PASSとも、今まで小説などで描かれてきたPSYCHO-PASSとも時代が異なっています。シビュラシステムは稼働し始めたばかり、サイマティックスキャンの結果を人々が気にし出したというレベルの時代の話となっています。
この時代だとまだ、色相が濁ってもバレなければ潜在犯として捕まることはないようでした。直接は描かれていないのですが、明らかな犯罪者が街頭スキャンなどで捕まると言った表現はありませんでしたし、サイマティックスキャンの設備がまだそこまでそろってない時代の話となります。
司法はあくまで警察のお仕事で、現実の我々の時代よりも厚生省は力を持っていて捜査権とかはあるもののTVのPSYCHO-PASSの時代のように司法もすべて司っているというとことまでは行っていない時代のストーリーとなっています。

さて、主人公は真守滄という女性捜査官となっています。それと相棒となるのが衣彩茉莉という元テロリストの少女。この二人の信頼関係と生き方を軸に話が展開されていきます。二人には二つの共通点があって、棄民政策によって日本国外に放逐された人たちの末裔であること。そして、TVの常守朱と同様に色相が濁りにくいという点。この二つの点以外は真逆の生き方をしてきたような人物となっています。
テロリストとして捕まった茉莉が、テロの首謀者から見限られたようだということから、捜査協力者となり、テロ首謀者を追っていくという話です。
途中、話がそれたりして棄民政策や色相改善用の麻薬の話になったりしながら、目標に少しずつ迫っていくという話になっていました。
色相が濁らないのに麻薬の売人に付け入るために色相が濁ってるふりをしたりとか面白かったです。(相手にはあっさりばれたけれど)

気になる人物が何人も出てきます。TVのPSHCHO-PASSに出てきた人物または、その関係者と思われる人物が出てきてる。まずは唐之杜志恩の血縁と思われる、唐之杜瑛俊と秋継の双子の兄弟、TV版1期目で連続殺人犯として出てくる泉宮寺豊久、この人物は主人公である滄の後見人として出てきます。また、TV版2期目でシビュラシステムの一部として出てきた免罪体質者である東金美沙子といった人物が登場してきます。
これからシビュラシステムが大々的に稼働していくという時期で、まだ東金美沙子とかはシビュラには組み込まれてないんですよね。
これからどうなっていくのかが楽しみな登場人物のラインナップになっています。
というか、免罪体質者(滄と茉莉がそうだったとして)が多く出てる印象を持ちました。あと気になるのは志恩さんは年齢的に瑛俊か秋継の子供ってことになるのかなというところですね。すごく気になってます。

テロリスト集団である「帰望の会」の首謀者であるエイブラハムをあと一歩というところで取り逃がし、それを追った茉莉が秋継に連れ去れるところで終わっているのですが、いろいろな要素が絡み合ってまだ事件の全貌は見えてない感じです。
そもそもが、この話で描こうとしているのは作品世界の根本にかかわるところなので、話がすごく大がかりな印象を持ちました。
「帰望の会」がキーになってるのは確かなんですけれど、この巻で描かれたのはどちらかといえば、色相を改善する違法薬物の話や棄民政策の話でした。棄民政策はかかわった人が明確にならないように役割を細分化されて行われたけれども、真相に気が付く人ってのは少なからずいて、かかわった人の色相悪化が深刻だったり、それを改善するために違法薬物がかかわってきたリという感じの展開をしていました。
サイマティックスキャンはあまり出番がないというか、向けられるのが主に滄と茉莉で、濁らないっていうのの証明に使われていたので、まだサイマティックスキャンを主題に置いた形ではないような印象はありますけれど、この話がサイマティックスキャンを大がかりに採用していく切っ掛けになるのかなって思いました。

さて、次で一区切りになりますね。
漫画版の監視官狡噛慎也という作品がまだ続いていますが、PSYCHO-PASSというコンテンツは締めに入っている感じを感じています。
面白い物語ですし、シビュラと常守朱の行く末も描かれていないので、まだまだ続けてほしいんですけれどね。
小説版、GENESISが終わったらまた新しいシリーズ始まらないかなぁなんて4巻を読む前から期待してしまっています。

 

キリングメンバー ~遥か彼方と冬の音~

キリングメンバー ~遥か彼方と冬の音~

秋月陽澄:著
さらちよみ:イラスト
電撃文庫


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電撃小説大賞の最終選考で選考委員に衝撃を与えたという触れ込みの作品。
この作品を電撃文庫で出してよいものか迷った模様。
内容としてはサイコサスペンスです。

登場人物を絞って、ある殺人事件の犯人捜しをするのかと思いきや、登場自分物たちの過去のトラウマと今おかれている状況を描いていて、女子中学生の殺人事件、夫婦を狙った連続殺人事件、無差別連続殺人事件、女学生の連続失踪と、大事件がおおむね絡んでくるという物語。話の根っこは6年前の起こった凄惨な事件(少年少女を親から買い取って、殺し合わせてスナッフムービーを撮っていたという事件です)に根差していて、その事件から助け出された少年少女がその後どうなっていったかという話になっています。
狂気の世界に囚われてしまい、精神的に壊れてしまった少年少女。その彼らが救い出されて、まともになったのかと思いきやという展開で、読んでいて吐き気がするほどの話。
気持ち悪いというのが正直な感想でした。
この手の作品ですから、そう思わせたら勝ちなのだと思います。

罪は罪としてあるけれど、それを贖えないとは思えないんですよね。
特にこの話の最初の事件の被害者たちはそれぞれ、強制的に加害者になることを強要されていたけれど、それは家庭環境が劣悪だった、売られた先が最悪の地獄だったということに起因している。
彼らは強要されたのであり、まだ、それに対抗するだけの精神は育っていない年齢です。
仕方のないことなのですが、その後、罪の意識によって壊れいった彼らが、起こしていく事件がなんとも切ない。そして気持ち悪いほど純粋な悪意に彩られていて、短絡的で「壊れている」という感じを読者にたたきつけてくるようなそんな作品でした。

唯一の救いは彼方と詩織の恋心、最初は名前を伏せられている登場人物と詩織の優しいふれあいなのですが、それがさらなる悲劇を生んだというのが、悲しすぎる。
救われないのです。この話。誰も。
例外なく救われないのです。
最後はぼかしてあるのですが、その行く末ってのが見えてしまっていて、悲しくなります。

狂気に彩られたこの作品。
できはすごい。
でも電撃文庫で出していいものかと迷う。理解できます。
つか、出したらダメだと思いました。
電撃文庫てライトノベルよ?
ライトノベルで出す内容じゃないんですよ…。これ…。
ガガガ文庫なんかでは、かなりきつい高年齢層というかラノベを大人が読んでることを前提に出してくる作品もあるのですが、そのレベル。
電撃文庫は比較的、大人も楽しめますが、内容は中高生が読んでも問題ない作品が大多数を占めています。
そのブランドでこれを出すのはちょっとなぁと思いました。
衝撃的でした。そして気持ち悪かった。そういう作品です。

 

絶対ナル孤独者4 ―刺撃者 The Stinger―

絶対ナル孤独者4 ―刺撃者 The Stinger―

川原礫:著
シメジ:イラスト
電撃文庫


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4巻目。
3巻目でサブタイトルだった凝結者があまり目立たなかった上に、彼との決着はつかずに終わりましたが、今回も刺撃者とは決着はつきませんでした。なんとなく半分づつ話がずれこんだ感じがします。今回の半分は凝結者の掘り下げをしている話となっていましたので。
凝結者である三川の過去とトラウマを描いていて、彼の掘り下げがされています。巻のタイトルは刺撃者ですが、刺撃者は敵として登場しただけでまだ謎が多く、どういった人物かもわからないので、彼の活躍というか、彼との戦いは次巻以降になると思います。そうなってくると、メインが彼との戦いなのに、また新しく出てきたルビーアイのコードネームがサブタイトルになる可能性が…。
このサブタイトルの付け方、あんまりよろしくない気がしてきました。(笑)

この巻で、物語は大きな転換点を迎えた感じがしました。
物語的には静かに状況が複雑化していってる感じです。
例によってミノルの殻の謎について、いろいろ調査しているっていう流れがあり、前巻で重傷を負って意識不明になったスウを心配しつつも、ある実験を行いスウの意識を取り戻すことに成功。
このときに起こった現象がなんとも不思議な感じで、孤独になれる為なはずの殻なのに、何者かのぬくもり的なものを感じるという流れになっています。
また、スウを救えたのだから、1巻で意識不明になったサナエを救えないかと考えたりと、いろいろ謎が多い能力となってます。これは小出しにしている感じですね。
最終的にはミノルの意識=孤独になりたいという意思、が覆される方向へ殻が導いていくという感じになるのでしょうかね。
どうもそういう流れな感じがします。能力的なところだけでなく、その成り立ちとかを考える上で殻の本質へ迫っていくというのがひとつの結論にたどり着くような予感を感じさせる内容となってました。

もうひとつの流れは凝結者、三川というキャラクターを通じて描かれる過去と、トラウマ。それに根差した幻覚症状といったサードアイ全体に対する疑惑。
ルビーアイにしろジェットアイにしろ、能力を与えてくれるだけではなく、何かしらの思考制御を宿主に対して行っているのではないかという疑惑が持ち上がってきます。
これを凝結者、三川というキャラクターを掘り下げることで描いていっている。
その結果として凝結者、三川を捕らえることに成功したわけですが、簡単にサードアイの摘出をするわけにも行かなくなったなぁという印象を持ちました。かなり重要なポジションにいるキャラクターになりましたね。想像してなかった。
普通の敵のひとりだと思ってたのに。

そして、今回の最大の謎は刺撃者=スティンガー。ルビーアイもジェットアイも関係なく敵対している人物の登場です。
ルビーアイの特徴(獣臭さを持つ、ジェットアイ保持者によって探知される)を持っていますが、本当にルビーアイなのかも謎。
能力は一見弱そうなのに、ミノル以外ではよけるのに失敗したら致命傷っていう凶悪なもの。でも、多くのものは謎。
しばらくは彼が敵対者として物語を引っ張っていくような予感があります。

大きく3本の話を織り交ぜながら描いていたのがこの巻だったなぁという読後感。
派手なアクションシーンとかは少なかったですが、それなりに楽しめました。
何より物語の深みがより増した感じを受けて、面白くなってきたぞという感じでしたね。でも、刊行ペースが遅いので、話を忘れないようにしないといけないのはいつもの感じですかね。
まぁ、大作を何本も抱えてるからなぁ…。この作品は後回しになりがちな感じがしています。

 

新約 とある魔術の禁書目録18

新約 とある魔術の禁書目録18

鎌池和馬:著
はいむらきよたか:イラスト
電撃文庫


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新約18巻目。
今回も逃走回だった印象。それ以上に説明回だった印象です。
あんまり、動きがあった印象が残る回ではないのですが、内容的にはすごい変化があった回となります。

前巻のラストで学園都市に居られなくなり、脱出が必要となった土御門と府蘭が学園都市から脱出するという大筋の話になるのですが、いつの間にかにアレイスター=クロウリーの過去についての説明をする回となっていました。
土御門と府蘭が脱出するにあたって土御門の義妹である舞夏も連れて脱出するという出だし。そのために上条ちゃんは協力するということで、今回のメンバーには最初からインデックスが含まれていて、ちょっとびっくり。インデックスが最初から上条ちゃんと行動している!とか思ってしまいました。ヒロインなのに主人公と一緒に行動することが少ないインデックスさんにやっと日の目が当たった感じ?
そして、今回はアレイスターがらみということで、少し解説を担当することもあり、インデックスの影が薄くないっていう珍しい回となっていました。

脱出するはずだったのが、学園都市を囲む壁を乗り越える前に、舞夏に魔術的な呪いが掛けられてしまい、それを解除することがインデックスらにもできず、ではだれなら解除できるのかということで、呪いをかけた本人であるアレイスターをしばき倒して解除法を聞き出さないといけないということで、窓のないビルへ侵入するという話になっています。
そして、窓のないビルへ突入してから、上条ちゃんが見る幻視。それでアレイスターの過去を追体験していくという感じになっています。現実に存在した人物であり魔術師であるアレイスターが何故、科学サイドの頂点である統括理事長などをやっているかにつながる話を延々と読まされた感じです。
アレイスターは現実の人物で、何をやったかというのが明確に記録に残っている人物なんですが、その時の心情や行動原理を作者の解釈で作品に合わせる形に調整したものを、作品の前提として説明されていった感じです。

この説明に入ったときに違和感を感じました。
作品の展開として、上条ちゃんは学園都市から脱出しようとしているわけではないんです。脱出しようとしたのは土御門達であって、学園都市=アレイスターにとっての重要度ってそれほど高くないんですよね。
それをわざわざ自分のところへおびき寄せる、自分自身に突っかかっていくような要因を作ってまで引き留めるというのに違和感を感じました。
それこそ、上条ちゃんに自分の過去を見せるという必要性があったのなら納得もしますが、実際に上条ちゃんに幻視を見せたのはミナ=メイザースという過去のアレイスターの関連人物でしたし、それにはアレイスターは関与していない。
であれば、アレイスターとしては上条ちゃんたちが窓のないビルに来たのは、偶然であり本筋ではないんですよね。
それこそ、アレイスター側からすれば、土御門達など、あっさりと消してしまえばいいのであって、それができない人物ではないんですよね。それが、結果、上条ちゃんとミナ=メイザースとの接触を生み、アレイスターが上条ちゃんと対峙するという結果を生む流れになっている。
ちょっと、展開に違和感を感じました。

アレイスターが最終的な敵だと思っていたのですが、今回の事を考えると違うのかなぁという感じになってきました。
アレイスターが今後どういう行動をとっていくのかが気になりますが、アレイスターの「人間」らしさってのが今回のキーだったのかなぁと思います。
子を思う人としての人物を描きつつ、その矛盾点や一方的な思考を指摘していくといった展開でした。
最後にローラ=スチュアートが出てきたので、久しぶりに必要悪の教会が絡んでくるんですかね?今後は。

何にせよ、アレイスターとの直接対決とかあったし、なんとなく終幕に向かって歩み始めているのかな?って感じさせる回でした。
ただ、この巻だけの感想としては、いつもよりノリがよくないし、延々と「おかしい人」の過去を説明されるのって結構苦痛だったな。
まぁ、アレイスターの過去って研究してみると面白そうなネタなんですけれどね。

 

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